「福島第一原発 真相と展望」アーニーガンダーセン(集英社)
アーニー・ガンダーセン博士は、福島第一原発事故の際、CNNニュースのコメンテイターなどをした原発の専門家です。
本書によれば、ガンダーセン博士は、2011年3月18日の段階で、CNNで福島原発のメルトダウンを予測していました。
この本の福島原発事故についての部分に目を通しましたので、重要と思われる個所をメモに残しておきたいと思います。なお、この本は、2012年2月22日に刊行されています。
【放出量は、チェルノブイリの2~5倍】
・福島第一原子力発電所から放出された放射性物質の量は、チェルノブイリ事故の2~5倍だろう。東京電力の計算方法には抜け穴がある。また、東電は、格納容器からの漏えいを計算に入れていない。(p.92~93)
【海外にも広がる放射能汚染】
・2011年4月、アメリカのシアトルとボストンの土壌サンプルから、福島由来と思われるホットパーティクル(放射性物質を含んだ埃(ほこり))が降り注いだことがわかった。(p.101)
【福島第一原発事故の真実とは?】
・非常用ディーゼル発電機を高所に設置できていれば、ここまでひどい事故にならなかった。設置の費用80億円ほどでできたことだ。(p.28)
・現状でも大小の爆発が起こりうる。爆発を防ぐには、窒素を注入し続ける必要がある。(p.37)
・福島第一原発の1号機では90%、2号機、3号機では70%のメルトダウン(炉心溶解)が起きているだろう。(p.44)
・2号機の格納容器の破損は、もっとも深刻。(p.55)
・格納容器が破損している1、2号機からは、何年にもわたって大気と地下水に放射能汚染が広がり続ける。(p.56)
・1~3号機は、圧力容器の内壁に沿って核燃料が一部残っている可能性がある。再臨界を起こさないためには、水で満たす際に細心の注意が必要である。(p.59)
・3号機は、格納容器に漏れがあり、水蒸気が漏れ続けている。何年にもわたって放射性物質の放出が続くだろう。3号機はメルトダウンし、メルトスルーしている。(p.59)
・3号機の使用済核燃料プールでは、即発臨界が起こったと考えられる。(p.63)
・原発から2キロ離れた場所で、燃料が発見された。(p.64)
・向こう10年にわたって、海中で核燃料の破片が見つかると思う。海岸から3キロの距離まで、核燃料の破片を探すべき。(p.66)
【4号機の危機】
・4号機の使用済核燃料プールで火災が起きれば、がんによる死亡件数が
最大13万8千件増える可能性がある。(p.70)
・4号機の使用済核燃料プールで火災が起きれば、水では消火できない。(p.71)
・東京の友人には、4号機が倒壊したら即座に逃げるように言っている。(p.72)
・4号機の燃料プールによる危機を収束されるためには、新たな使用済核燃料プールを地上につくり、燃料を20トンほどの小さなキャスクで少しずつ運び出すという方法があるかもしれない。(p.78)
【今後の展望】
・核燃料が大気中で溶解しない温度に冷めるまで、少なくともあと3年を要する。(p.20)
・今の状況下で圧力容器や格納容器から核燃料を取り出す技術は存在しない。(p.79)
・1~3号機だけでも、約257トンのウランを回収しなければならない。(p.80)
・核燃料を取り出すためには、技術開発に10年、実行するのに10年かかるだろう。(p.82)
・廃炉には、少なくとも20兆円が必要だろう。(p.84)
【内部被曝と健康被害】
・放射性物質による被ばくの健康被害には、ここまでなら安全という「しきい値」(閾値、しきいち)は存在しないと考えられる。(p.96)
・福島から送られてきた車のエアフィルターは、放射性廃棄物として破棄しなければならないレベルまで放射能汚染されていた。(p.101)
・首都圏の埃から、アメリシウム241を検出した。(p.101)
・東京で検出されたセシウム134、137の「1平方メートルあたり1万ベクレル」とは、すさまじい量の放射能。首都圏では、長期的にがんや循環器系の異常が増加するだろう。(p.104)
・放射性物質は、液体よりも気体(呼吸)の方が、体内に速やかに吸収される。(p.108)
・東京だけでなく、日本のどこにいても、次のようなことをした方がいい。
掃除の際、放射性物質は、濡れた布で拭き取とる。乾いた布だと、舞い上がってしまう。掃除機にはHEPAフィルターを使うべき。そして、エアコンも車も、フィルターはまめに交換した方がいい。(p.115)
・汚染された廃棄物の安易な焼却はやめるべき。(p.127)
・大きな懸念材料のひとつが地下水。早急に地下水への汚染拡大を止めるべき。(p.130~131)